痔核(いぼ痔) |
痔疾患の中で、もっとも多いのがいぼ痔です。肛門にいぼのような腫れが生じる疾患です。排便時の過度ないきみにより、肛門周囲の血管がうっ血し、それによって痔核が発生するとされています。
肛門の内側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核と呼び、症状や治療法がかなり変わってきます。女性の妊娠時に悪化することはよく知られていますが、多くの場合は便秘や食生活、行動パターンからくる生活習慣病と考えられます。 |
いぼ痔のうちの内痔核 |
いぼ痔の多くを内痔核が占めています。長期的に悩ませるいぼ痔は内痔核が主たる原因であることが多く、重症化することも内痔核のほうが多いです。
排便時の出血を起こすことがあります。かなり大量に出血するので、これによって内痔核があることに気付くケースもありますが、鏡でおしりを見ても自分ではわかりません。
内痔核は、進行すると排便時に痔核が肛門から出てきてしまうようになります。
はじめは自然に中に戻りますが、やがて指で押さないと戻らなくなり、最終的には押しても戻らなくなります。さらに大きくなると、押し戻せない嵌頓痔核となって脱肛したままで大変痛い状態になります。
内痔核の治療は、どの段階にあるかで変わってきます。
飛び出た痔核が自然に戻る段階までであれば、軟膏等の薬物療法、生活習慣改善といった保存療法で治療可能です。嵌頓痔核であれば、手術が検討されます。 |
外痔核 |
肛門にイボ痔が急にできて痛い、というのが外痔核です。内痔核と異なり、自分でも気が付きやすい痔です。知覚神経が豊富な表皮できるため、強い痛みを生じやすく、出血は少ない傾向にあります。
外痔核は、ほとんどが薬による保存療法で治療可能です。軟膏や座薬などを用いた薬物療法、排便習慣や生活習慣の改善などが保存療法の主な内容です。 |
切れ痔(裂肛) |
切れ痔(裂肛)とは、肛門が裂けて傷ができている状態です。硬い便が出る時に肛門よりも便が太く、肛門が裂けてしまう状態です。
排便時に便が傷に触れながら通過するため強く痛みますが、出血はペーパーに付く程度で少量です。痔の中では痔核にならんで多い病気といわれています。
初期の裂肛では浅い裂傷のみですが、何度も繰り返し切れていくうちに慢性裂肛となります。慢性化した傷はさらに深くなって、肛門を狭める狭窄を起こし、肛門狭窄(肛門が排便時に十分開かなくなる)になり、日々の排便に支障をきたします。
傷が浅い初期には軟膏や坐薬、そして便を軟らかくする薬の服用などで短期間に改善することがほとんどです。慢性化してしまった場合には手術が検討されます。
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痔ろう(穴痔) |
直腸と肛門の間あるくぼみに下痢などで便が入ってしまい、細菌感染して化膿する肛門周囲膿瘍が起こります。さらに細菌が組織深くに入り込んで菌の巣穴ともいえるトンネル=瘻孔を形成する病気です。
瘻孔が次第に伸びてゆき、肛門近くの皮膚に穴が空いて貫通すると痔ろうです。瘻孔内にたまった膿が排出されると症状はおさまります。ただし、痔ろうのトンネルは自然にふさがることはなく、直腸から液体が穴を通じて漏れ出して下着を汚すようになります。また、トンネルが複雑に成長してしまうケースもあります。
自然に完治することはまれで、何十年と治らずに癌化する場合もあります。
痔ろうは、手術が必要です。
トンネルの位置、深さ、向きなどにより適切な手法を用いて緻密な手術を行う必要があり、そのための確定診断はかなり難しくなっています。痔瘻治療の大原則は『膿を完全に排出しきること』です。一時的に膿を出しても完治はしません。痔瘻はいったん治ったようにみえても必ず再発して、放置すれば数十年にもわたって繰り返すのはこのためです。痔ろうはクローン病などの併発がないかを確認することも重要になりますので、内視鏡検査が不可欠です。 |
肛門周囲膿瘍 |
肛門の周りに膿がたまる状態であり、肛門周囲膿瘍と呼ばれます。肛門周囲膿瘍とは痔ろうの前段階といえます。
一般に浅いところに膿の溜まりができた場合、肛門の周囲にしこりやおできのようなものがあるのを感じます。激しい痛みも感じます。深いところにできた場合は、しこりを感じないことも多く、腰のあたりに鈍い痛みがあり、微熱やだるさを感じます。
肛門周囲膿瘍は痛みが強く、膿が多くなると熱もでますから、切開が必要です。根本的な治療としては、切開して膿を排出することです。切開はどのあたりに膿が溜まっているのかを、視診や触診などで見極め、また深い部分の場合はエコーなどで確認しながら行います。小さな膿の溜まりの場合は、麻酔を使用しないこともありますが、大きい場合は麻酔を行います。
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